ゲーム脳けなし記事ハケーン2005年06月01日 22時51分16秒

東京大学大学院情報学環教授 馬場章氏インタビュー 後編 ゲーム脳、言われているのは日本だけ (ITmedia)

とは言え、これまでゲームは悪い影響ばかりにスポットが当たっていた。その端的な例がゲーム脳やネット中毒になると思います。確かにネット中毒にはそれなりの実証研究があります。ただ問題なのは「中毒」というのは医学用語ですから、どういう症状が出るのか、それに対する処方せんは何なのかを、きちんと定義する必要があるんです。

ネット中毒に関しては、アメリカに研究者が何人もいるんですが、基準がバラバラ。簡単なのは10項目の質問をして、半分以上当てはまればネット中毒といった診断がありますが、私ですら当てはまってしまう、当てにならないものです。ですから、ネット中毒をきちんと医学的に定義して、それに当てはまる人には医学的な治療を積極的にしなくてはならない。

何でもかんでも「中毒」って言葉を当てはめたがる人がいるけど、それは「アルコール中毒」に対する誤解と同様に、多くの場合誤解なんだと思うのよね。例えば、「メール中毒」なんてことが言われていたりするけど、連絡先として仲間に触れ回っているメールアドレスに、何かしらの連絡が届いていないかを日常的に気にかけるのはむしろマナーなのであって、マナーであるがゆえに、チェックを怠るとキモチワルイと感じるのは社会的に至極自然なことで、中毒でもなんでもないでしょう。留守番電話と同じです。留守番電話に何か録音されているのに聞かないままほったらかしにしていたら失礼でしょう。おいらはケータイの留守電は気づかないままほったらかしにすることがすごく多いけどねw。

大体そんなこと言い出したら、毎日3食しっかり飯食ってる人は「ご飯中毒」ってことになっちゃいますよw。

ゲーム脳に関する学説は2つの点で間違っているんです。ひとつは「脳波の測定方法」。森先生は簡易的な脳波測定機を作り、大学生や学園祭に遊びに来た小学生の脳波を測ったようですが、脳波はそんなに簡単に測れるものじゃない。

私は脳科学の専門ではありませんが、脳科学の専門家の研究室にいくと、それはもう仰々しくて、測定にもかなり習熟した技術が必要なんです。それを帽子みたいなものを被って……漫画じゃないんですから、そんな簡単に脳波は測れないですよ。

んー、これについては、おいらは森教授の脳波測定器を知らないのでなんとも言え無いのですが、少なくともおいらの大学の研究室では、生体情報測定に使用する実験室を持っていて、以下のような環境で脳波の測定を行っていました。

  • 室内は網目状の導体を張り巡らせてアースしていました。外部や蛍光灯などのノイズ源からノイズが入り込まないようにするためのシールドを張っていたわけです。
  • 本来、頭に取り付ける電極の数は、実験の種類や求められる精度によって異なってくるらしいのですが、基本的にへたれ学部生が行う実験では電極は 8 つぐらいでやっていたと記憶しています。電極には胴体のグリスを塗って頭皮に直接くっつくように貼り付け、専用の網帽子 (手作りだった記憶が ^_^;) で固定していました。終わったあとはグリスを落とすために軽く頭を洗う必要がありました。
  • 脳波は後でスペクトル解析するのですが (心電図のように波形を見て吟味するものではないです)、脳波として有効な帯域は非常に低いため、フィルターの設定も慎重を期するものです。なんだかでかいラックに昔の PC-98x1 の C バスちっくなカードを何枚も挿して、その一枚一枚が各チャンネルのハイパス、ローパスフィルターとして使われていました。結線はすべて同軸ケーブルです (っつっても使い古しのおんぼろだったけど)。
  • 計測中は基本的に絶対安静です。体を動かすと漏れなく筋電図が入り込んでしまい、ノイズになってしまうからです。ゲームの場合はプレー中ではなくてプレー直後数分間とかにするのが本当は正しい計測のあり方なんじゃないかな。
  • 計測時間は結構長く取ります (なるべく正確にスペクトル解析を行うため。出来れば 10 分は取りたいけど、時間の経過が実験の意図と干渉する場合はあまり長くできないので、その辺はトレードオフ)。
  • 閉眼状態と開眼状態で同じ時間ずつ計測を行い、比較対照として参考にしていました。基本的に、閉眼状態の方がストレスが少なく、その分脳波はα波などの低い周波数帯域で安定しやすい傾向となります。開眼状態で計測する場合は、まぶたの開閉がノイズになるため、なるべく瞬きをしないようにすることが求められます。

まぁおいらは脳波はあんまりやらなかったので正直よく覚えて無いのですが (^_^;、だいたいこんなもんだったかと。

んで、脳波計測の厳密度は実験の内容によりけりなので、帽子みたいなやつでも、ちゃんと電極が頭皮にくっつくように使われているんであれば問題はないです。ただ、その他の部分が徹底的に簡易的だったりすると (例えばフィルターの類が医療用器具として使われているものの流用というかおさがりだったりとか、ノイズ対策がお粗末だったりとか、ゲームのプレー中に計測してリアルタイムにスペクトル解析を行うような方法だったりとか)、計測の信頼性は低下する可能性はありますが。

記事後半のご指摘については他所でも散々言われていることだったりするので略っ。

どうして人々にはゲームに対する不安があるのか、という問題には、ゲームが登場して日が浅いからという理由を挙げることができると思います。テレビが登場した時もやっぱり恐怖に思われたんですよ。テレビを見すぎると知的障害になるといったことが言われていました。ですが、50年経った今どうなっているかと言うと、知的障害にはなっていないですよね? それどころか、最初は不安に思われていたテレビは、どの小学校にも設置され普及している。教育にも利用されているんです。

ゲームの場合、テレビに比べればずっと新しいメディアなので、人類がゲームとの付き合い方を確立できていない。例えば、テレビは何時間以上見てはいけない、近くで見てはいけないといったように暗黙のルールが蓄積されてきて、私たちはテレビに支配されるのではなく、反対にテレビを使いこなす、そういう方法を身につけてきたと思います。しかし、ゲームに関してはそれだけのスキルを身につけていない。だから不安なんです。

ゲームは一日一時間!! (by 名人)