少子化の何がまずいの? その22007年02月09日 09時56分00秒

前回の続き。って訳でも無いんだけど、64bit たんがスラド日記で面白いこと書いてたのでちょっと引用。つか、その発想は無かったわ。

5年後のことを考えてみよう.15歳だった122万人は有権者となる.一方,56歳だった230万人は第2の人生を満喫しているだろう.その差は1.89である.若年がいくら票を投じても,それが反映されないことになりかねない.極端な話,日本を支えているのは労働者世代である.最も働き盛りの年代の意見が,政治に反映されないことが起こりえるのである.

これを解決するには,年齢別に重みを算出して1票の価値を平等にすることである.可能であれば,(選挙であれば)選挙区ごとに重み計算をするなどの柔軟性が必要だろう.

地域間の格差なんてのはよく言われることだけれども、世代間の格差ってのは、確かに単純に国政であることを考慮すればよっぽど地域間の格差よりも重要視すべき問題かもしれない。単純に人数が多いほうを重視しようという問題でもなくて、労働者世代が少数派になるという点もまた重要になってくる。

しかしどうなんだろう? そもそも選挙ってのは所詮は数のゲームだっていう面もあって (っていうかそういう面のほうが強いか)、特定の立場の人が多い選挙区においてはその立場の人に贔屓した政策を打ち出したほうが有利になりがちだったりする。でもその立場ってのは必ずしも年齢に限ったことではなくて、職業分布や家族構成などによっても変わってきたりする。ホワイトカラーエグゼンプションなんかは事務職系サラリーマンには関心事だけど、工業、商業、土木業、農林水産業等々に従事する方々には決して関心事ではなかったりする。

で、それらの格差は地方自治に関しては気にする必要は無いどころかむしろ反映されて然るべきなんだけれども、国政においてはどうしてもマスコミにおける報じられ方に左右する部分が大きすぎるって状態になっちゃってる。著作権界隈なんてネット上で議論されてるほど一般に関心が寄せられてるとはどうしても思えないし。

だから年齢格差による票差を補正するっていう案は面白いとは思うんだけど、個人的には民意の反映を選挙に依存しすぎちゃっていること自体に問題があるような気がしてたりする。本当は選挙において投票者が重視すべきは、政策内容や実現しようとする事柄そのものではなくて、議会に参加する代表者としての資質なんじゃないかと思う。そして、実際に話し合われる内容、すなわち議題や法案に対しては、民衆がもっと柔軟にコミットしやすく、また民意の反映もされやすいシステムに切り替えていく必要があるんじゃないかと思う。

せっかくネットワーク環境が構築されて、技術的にはそれがやりやすい状況が整ってきていると言うのに、民政がそれに即して変わってゆけないのであれば、これほどもったいないことはない。

憲法改正に関していえば、改正されるのは一つだけ (例えば九条だけ) ってわけでもないだろうし、それらを全部いっぺんに書き換えた上で国民投票、ってことになるんであれば、例え書き換えた内容が妥当であってもおいらは投票に参加したくないな。年齢格差以前の問題として。

コメント

_ 噂の64bit ― 2007/02/10 00:37:23

どうもです~.

“民意の反映を選挙に依存しすぎちゃっていること自体に問題”のところで,確かにそうだと思うのですけど,その色を濃くしたのはコイズミさんだったような気がしなくもないです.「郵政民営化解散です!」なんて言っていたけど,国民の真意を問うために衆議院を解散して・・・というやりかたは,まさに人を選ぶ選挙ではなく民意を問うことが優先になっていたと言えると思うのです.

ただ,仮にそうだったとしても,あるいはもっと柔軟でコミットしやすく民意が反映されやすいシステムになったとしても,「世代間投票格差の改善」は有効に作用すると思うのです.

民主主義が,多数決を原則として意思決定する限り・・・.


#ここのブログ,IDもってなくてもコメントできるのは良いねぇ~.

_ T.MURACHI ― 2007/02/10 05:26:30

変な時間に目がさめてもーた。(づω=)ノシ

>64bit
おひさ~

> その色を濃くしたのはコイズミさん

おっさる通り。おいらはそれを良かったとも悪かったとも言える口では無いのですが、議題を一つに固め、選択肢を二択だけに見せることによって、国民に、政治 (の表層) に対する関心を高めさせ、そして世論を誘導することが可能であることを証明した。そうした選挙戦略手法に対して、有効な誘導妨害を実施できる利口な党派が存在しなかった。民主党は相変わらず何をやりたいんだかさっぱりよくわからなかったし (せめて「郵政民営化は民主党にお任せください」ぐらい言えばよかったのに)、共産党以外の他党もまた然り (公明党ですら然り)。共産党だけが「確かな野党が必要です」とかテキトーなことやってちゃっかり票を掠め取っていたよーな気がする。
結局、あの選挙に関していえば、投票率が上がれば与党が有利になる、のセオリーどおりに展開した訳だわね。

宮台氏とかも言ってるけど、投票率ってのは微妙で、実は高ければいいってものでも無い。国民の政治に対する関心の高さは社会不安のバロメータでもあって、普段政治に関心の無い「衆愚」の動員が一方的な世論誘導を導いてしまったりする。
わかりやすい例で言えば、「児童ポルノいくない」→「規制強化」みたいな。人身売買その他の実態故にユニセフから注文が来たという背景や、作られようとする法案の中身についての議論が置いてきぼりなまま、倫理観撫で回して反対しづらい空気を作って法案ごり押ししようとしてた。「何故その立法が必要なのか」って部分がちゃんと話し合われていれば、被写体の実在しない「絵画」まで禁止の対象になることはなかった。
それでもこのケースなんかは関心寄せてたとある漫画家団体が政治家つっついて回ったりしたおかげで、水際で問題部分は何とか修正されて通ったりしたわけだけれども、例えばこれが宮崎勤事件直後で、法案が議題として政治利用されて「児童ポルノ解散です!」なんてなってたらどうだったろう? みんな、「児童ポルノいくない!」になって、法案の中身なんてろくすっぽ見ずに、やっぱり自民党に投票したんじゃないか。

一方で、どうあがいたってメインの議題に成りっこない議論については、どうしても民意が反映されにくくなる。著作権なんかはその代表例よね? なぜこれほどまでに JASRAC なんて公的ヤクザが野放しにされてるかっていえば、こうした政治システムの問題が、根底として存在しているんじゃないかと思う。

おいらはより多くの民衆が政治に関心を抱くこと自体は悪いことじゃないと思う。でも、流されるだけの中途半端な関心は議論の妨げにしかならないし、最終的には多数決で決定が下されることをいいことにそれをいいように利用されたのでは、最終的にはあまり民衆の利益にならないんじゃないかと思う。
本当は表層に関心が抱かれるべきなんではなくて、詳細、中身に関心が抱かれるべきだし、わかりやすく語られるべきは外面的な構図ではなくて、より具体的な提案の内容やその背景であるはずだと思う。

本来ならばその辺をつっつくのがジャーナリストの仕事であるはずなんだけど、こいつらもまたちっとも機能して無いし。。。朝日もそんなに民主党勝たせたいなら郵政民営化の法案比較と問題点整理を図入りで事細かに解説して特集記事でも組んでやったらよかったろうにとかつくづく思う。まぁどっちにせよ、昨今みたいな状態の民主に政権任せようって気にはどうしてもなれないし別にいいんだけどね。

_ T.MURACHI ― 2007/02/10 06:07:58

肝心の世代間格差について全然書いてなかった (^_^; 。

本来、民主主義って、多数決ではないのよね。多数決はあくまで「最終決定」の原則であって、民主主義の原則は「議論への参加」にあるはず。
現行の政治システムは、国民 (あるいは地方自治なら都道府県民、市区町村民でもいいんだけど) に「最終決定」の一部への参加は提供できているかもしれないけど、「議論への参加」はあんまり提供できていないんじゃないかと思う。

例えば 10年後、年金もらってる 66歳に有利な内容の法案が作られようとしているときに、その法案が労働者への負担として与える問題点を的確に指摘してより良い方法を提案できる 25歳が存在し、その案が検討されて吸収されるような環境があれば、世代間格差はそれほど気にならなくなるんじゃないかと思う。そうした様子が公開されて的確に報道されれば、世間の 66歳を納得させることができる可能性も高くなる。で、そうやってたくさんの「議論への参加」を経て磨かれた法案一つ一つについて、最終的に可決するか否かについては、多数決で決を取ればいい。

ちゃんと民政やってる国は実際それができてるのよね。法案に問題があればマスコミが指摘して、それに則って結構頻繁にデモが起こったりする。フランスなんかは好例じゃないかな。もちろん、個々のケースについて言えば賛否両論といえなくも無いけど。
ex) http://blog.livedoor.jp/gm2129/archives/50316925.html (あんまり賞賛できる例じゃないけど)

日本の場合はどうしてもかつての学生運動のイメージがあって、デモ自体が目的化しちゃったり、それらが白い目で見られちゃうような空気があったりして、ちっとも機能していない。そもそもそんな立派なイデオロギー持った学生ってイマドキいないし。

でも、そんな日本の風潮であっても、ネットが活用できるなら、すなわち、ネットを通じた議論参加が可能なシステムが用意されるならば、状況は多少は変わるかも、とかちょこっとだけ思ったとですよ。まぁ、そういう変革を今の政治家に求めるのは現実的じゃないんだけどね。

_ 噂の64bit ― 2007/02/10 18:22:50

まぁ~,T.MURACHIさんの言いたいことは分るんだけどね.自分も同じような観点で考えたこともあるし.

>本来、民主主義って、多数決ではないのよね。

「民主主義の原則は多数決である」とは言っていませんので念のため.

“多数決はあくまで「最終決定」の原則”と位置づけるなら,やはり「世代間投票格差の改善」は有効に作用すると思うのですよ.しかも,比較的容易に導入できるメリットがあります.

デモの話が出てきましたけど,高齢者がデモを起こすのは大変でしょう.投票時に自分の意思を反映させたいと思うならば,やはり「世代間投票格差の改善」が生きるんじゃないかと思うんです.

ネット活用したシステムは私も賛成です.でも,そう環境はそう遠くないうちに実現するでしょうし,既に機能しつつあると思います.こうやってブログで議論することが次第に大きくなって政治に反映されれば,十分ネットを活用したことになると思いますし.

ただ,それ以前に,我々技術者が解決しなければならない問題のほうが先のような気がします.情報の安全性,健全性,信頼性などの保障が十分に達成できないと,ネット上での議論は参考程度になってしまい,政治に生かすほどの影響力が持てないのではないかと思うのです.その為の技術を作っていかなきゃいけないんじゃないかと思ってます.

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_ おきらくプログラマー - 2007/03/16 00:37:57

 某掲示板で述べたりT.MURACHI氏が引用してくれたりした内容なのですが,このブログでも改めて述べてみたいと思います.  ここのところ毎日のように耳にする“格差”のうち,“世代間格差”というキーワードがあります.世代間格差の唯一の定義はないように思われますが,..