結局 Y!Blog は転載機能で何を提供したかったのか? ― 2007年03月08日 00時22分21秒
変更内容:
・オリジナルの記事からしか転載できないようになり、二次転載はできなくなりました。
過去転載分の記事は一度だけ転載可能です。
・記事投稿の際にデフォルトで「転載許可」に設定されていた転載モードが、今後はデフォルトで「転載不可」となりました。
携帯電話から投稿された日記も、「転載不可」に設定されます。
過去投稿分の転載モードは変更されません。
転載機能につきましてはご要望を多数いただいたため、慎重に検討を重ねた結果、仕様の変更をさせていただくことになりました。
他人の著作物の自由な利用が可能になれば、新たな作品を作る方法は大幅に広がります。より自由で、潤沢な材料が揃った環境が用意されれれば、今では考えられないような素晴らしい成果物がどんどん生み出されるに違いない。とくに現在、開花を妨げられているのが「編集」の才能です。ニコニコ動画の成功が示したのは、ちょっと手を加えるだけで価値が急増するコンテンツがある、ということ。個人のブログにも、こうした可能性があるはずだと思う。
Yahoo! Blog の転載機能の真骨頂について、当の Yahoo! Blog 運営者当人がどれほど認識していらっさったのかよー知らんわけではあるのですが。。。個人的には、その機能が云々ということではなくて、「記事の転載という行為を推奨する」という態度の表明にあったんではないかと思っています。
一部で「ブログ記事の転載=チェーン日記」という思考停止を前提とした議論が流布されていたわけですが、その一方で、この機能の検証と利便性に関する考察ってのがどれだけ行われてきたのかって辺りがスコンと抜け落ちちゃっているんで無いの? って気がしてしまうわけですよ。それでなくてもブロゴスフィアの間では今日も「まん延するニセ科学」のパロディーがあっちゃこっちゃで作られて持て囃されたりしているわけで、文化的な側面で考えたときに Yahoo! ブログの転載機能が存在する/しないが結果に対してどれほどの差分を提供してこれたのかが疑わしいのであります。てゆかよーするに「フツーにコピペでいいじゃん」と。
個人的に、Yahoo! ブログの転載機能で引っかかる点について列挙しておきます。
- 転載記事内容を、転載者が改変できない。
これではパロディーは作れません。転載した記事内容に対して、自らの見解を付け加えることもできません。徳保さんがおっさられているような、
ちょっと手を加える
というこを、この機能を用いて行うことができません。 - Yahoo! ブログ内の独自機能であり、技術仕様は公開されていない。
つまり Yahoo! ブログユーザーにしか使えないわけです。トラックバック然り RSS 然り、ブログと呼ばれるツールにおいて一般的な機能の普及を支えたのは、それらの機能を支える技術の戦略的な標準化にあります。どのブログツールでも共通して使える機能だからこそ、広く使われるようになったのです。
Yahoo! ブログが「記事の転載を推奨する立場」を前面に押し出したいのであれば、転載機能については技術仕様を公開するか、少なくとも API (Yahoo! ブログの記事を転載することを伝える XML テキストの構文とか、転載の為の記事情報を取得する方法とか) を公開すべきではないかと思う。
- そもそも転載元の記事執筆者にとってのメリットが無い。
転載機能を用いた転載を「正規の転載」として認めるならば、そのような方法で転載が行われている件数は、転載元の記事執筆者に通知されるべきでしょう。PV やコメント数、トラックバック数などと一緒に「転載された件数」がカウントされるのであれば、それは記事執筆者のモチベーションに良い刺激を与えるかもしれません。
そのような仕組みが無いまま、仮に、「リンクする代わりに転載する」という行為が横行されるような状況になれば、記事執筆者は転載されることを拒みたがるようになるかもしれません。
- システム的なメリットはあるのか?
これは実際に Yahoo! ブログのコードを見たわけではないので検証できません。転載機能を用いて転載された記事は、Yahoo! ブログのシステムにおける内部の DB では同一のデータにリンクしているのかもしれないし、単にコピーしているだけなのかもしれません。後者であるならシステム的にも無意味で、「だったらコピペでいいじゃん」という話になってしまうわけですが (強いて言えば、転載を行う人にとっての「手軽さ」が違う、という点はある)。
しかし、2/26 の機能改善で、Yahoo! ブログは転載機能にいろいろと制限を追加してしまった。特にデフォルトの変更は、転載という行為に対する Yahoo! ブログとしての態度の表明をも変更するものです。もちろん、しつこいようではありますが、そのことについて Yahoo! ブログ運営者側がどの程度認識していらっさるのかは、知る由も無いわけではありますが。
コメント
_ 通りすがりに ― 2007/03/09 18:50:16
_ T.MURACHI ― 2007/03/10 01:17:10
だったら「Yahoo! は API を公開しろ」なんて言うなよ、ってのは、まったく以っておっさる通りなのですが。。。(本音はちっとも望んでない)
着目すべきはあの機能の存在自体ではなくて、ああいう機能を用意した Yahoo! Blog の態度だと思っています。「転載」という方法論の先駆者としてリードする立場にありたかったのか、それとも特にこれといってなーんも考えてなかったのか。
まぁあのシステム自体がそもそも韓国 Yahoo! のそれをそのまま流用しただけの代物なので、どーせなーんも考えてなかったんだろうなーというのが予感であり、2/26 の「機能改善」はその状況証拠になるっぽいなぁという雰囲気ではあるのですが。
ちなみに通りすがりにさんが示してくださったリンク先の記事にもやはり「転載内容について転載先ブログからの編集は不可」とありますね。Y! Blog にせよこの方にせよ、おそらく同一性保持権への配慮ということを気にしておられるのだと思うのですが、個人的には掲示板への書き込みやメールの文面などとの明確な著作物的区別をブログ記事に持たせることが当然であるとする前提事項自体に違和感を覚えます。
例えば全文引用し、その一部を装飾強調した場合、転載者は同一性保持権侵害に当たるのでしょうか?
例えば全文引用し、茶々入れ形式でコメントを挿入して記事をでっち上げた場合、転載者は同一性保持権侵害に当たるのでしょうか?
ブログ記事は著作物であるといえるかもしれませんが、それ以前に、ブログはコミュニケーションツールではなかったのですか? 著作権はコミュニケーションの手段をも、制限すべき強い法として存在すべきなのでしょうか?
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