健康な木々の育つ森を焼き払っておいて「間伐しました」はねーよ。2009年01月16日 08時56分41秒

ここ最近の不況に関する議論で、「派遣村を擁護する人たちは木を見て森を見ていない」と言ったようなことをおっさられる経済屋さんをちらほら見かけます。

そういう人たちは、「雇用を守れと言ったところで、企業が潰れてしまったのでは元も子もない」であるとか、「今製造業の派遣を規制してしまったらかえって大量の失業者が出て官製不況になるぞ」などと言って、企業による派遣切りを正当化する訳です。

なるほど、林業において森を育てるには間伐は不可欠であるとはよく言われます。ましてや天候に恵まれず、痩せてしまった土地に木々をそのまま立たせていたら、森全体が道連れになって砂漠化してしまうぞという訳です。(ってさすがに大げさか? w)

しかし、これまで自動車産業をはじめとする製造業を中心に行われてきた派遣切りの実態は、果たして間伐というのにふさわしいものだったのでしょうか?

本来であれば、経営状況の悪化故に仕方なく労働者を解雇するのであれば、その基準は企業活動にいかに貢献しているかで判断されるべきでしょう。もちろん、成果主義は富士通をはじめとして正しく機能していないことが既に耳にたこができるほど指摘されているところであり、ちゃんと運用しようとしたら非常に高いコストを要するものです。

しかし、今回の派遣切りは経営的にも非常に楽ちんなものでした。別段個々の派遣労働者の能力や勤務状況等を査定し個別に人事を施す訳でもなく、ただ単に、「○○工場は×月△日限りで畳みますので、そこに勤めて頂いていた派遣の皆さん、さようなら」とやっているだけなのですから。そしてそうした実態を以て「雇用の流動化というのは、まぁ、そういうもんだ」と開き直ってなおそれを推し進めようというのですから開いた口がふさがりません。

製造業に従事する企業の多くが、従業員の能力をまともに評価することもできないことが実態として明かされたというのに、それでもなお雇用流動化を訴え続けるというのであれば、そんな言説が労働者に信用される訳がありません。このような経営体質には、一般的に「有能」とされる労働者(よーするに「コミュ力」が高くて仕事の飲み込みが早いタイプのことやね)ほど敏感だったりしますので、いざ正社員も首切りを、といった段階で逃げる体制もしっかり整えていらっさることでしょう。そうして後にはほんの一握りの逃げ遅れた (愛すべき) 技術バカと、保身以外のことは考えられない大量の単なるバカが残るでしょう。仕方ないですよね? 間伐するのに、斧を使わず火炎放射器を使っちゃった訳だから。皆さんの大好きな「効率」を口実にね。

先日、学究社とモンテローザが 3桁単位の臨時雇用を募集した件について、NHK の朝のニュース番組で続報のようなものが特集として報じられていましたが、とりわけ学究社の方にはたくさんあった応募者のほとんどが B ランク以上の 4大卒で、 2割の人が教職員免許も持っていたと言うことで、社長さんが驚きの談話を寄せていました。曰く、「本来であれば企業の中核を担うべき人材が、派遣切りにあって苦しんでおられたのですね…」とのこと。

もうそろそろ、日本的「高学歴指向」も、その信頼を失ってもいい頃なのではないかと思う今日この頃、皆様いかがお過ごしでいらっさいますでしょうか。まぁ、F ランク出のおいらはのほほんと社長業やってたりする訳ですが。w

閑話休題。学歴がその人の職能を決めるなんて事はこれっぽっちも思ってはいませんが、その一方で新卒一斉採用にあぶれてしまえばせっかくの学歴も生かせなくなってしまうような社会では、底辺の底上げは到底期待できないでしょう。雇用流動化も結構ですが、そうであればそれ以前に職が無くとも生きては行けるというレベルでの十分な福祉を充実させ、雇用側と労働側との立場を真に対等にすることこそが優先されるのではないでしょうか? それを実現させるのにどうしても必要とあらば、消費税率引き上げにもやぶさかではないんですけどね。