有害情報考2007年11月11日 21時47分06秒

「有害情報」という言葉自体に、マスコミ的な悪意を感じている人は少なくないんじゃないかと思う。この言葉には普遍的な定義というものが存在せず、たいていの文脈においては本当に何らかの害をもたらすという意味ではなく、書き手、もしくはせいぜい書き手によって「想定される」読み手にとっての「都合の悪い情報」ぐらいの意味合いで使われることのほうが圧倒的に多いからだ。この言葉は、実は「うざい」「ヤバい」「フツーに○○」並みに、世の権力者にとっては「便利な言葉」なのである。

「有害情報」として扱われるものの筆頭は、やはりポルノだと思う。純粋に「ポルノは有害だ」とする思想は、ほんのひとつの価値観の表れであるに過ぎず、思想・信仰の自由を憲法にうたうこの国において、これを国家が規制するということは、本来はあってはならないことだ。しかしこれを「有害情報」という取り扱いの下に規制する理由があるとするならば、それは公共の利益に反するから、ということになる。ポルノは情報であり、表現であると同時に、嗜好品でもある (余談だが、児童の性を描いた漫画・イラストが児童ポルノの対象として規制されることに反対する人々のうち、表現の自由自体については実はそれほど思い入れが無いにもかかわらず、これを標榜することによって自分らの好きなロリエロ漫画を守ろうとする人たちは、ポルノが嗜好品であり、嗜好品は時として規制の対象となりうるという視点に欠けている気がする。酒やタバコが課税対象となりながらもこの国において一定の地位を確保していることについて、彼らはもっと思慮をめぐらせるべきだと思う)。ポルノが過剰に蔓延れば、国民の労働力の生産性が低下し、国益に反することとなる。また、非科学的且つ古い考えだが、過激なポルノが引き金となって、類似する性犯罪が引き起こされないとも限らない、という見方もある。ポルノが歴史的に規制されてきた事情があるとすれば、概ねこういったことであり、国家の利益という本音と、国民が抱く一縷の不安という思惑が重なった結果、性に対する強硬な倫理観を表向きの理由として、合意がもたらされたのである。

もちろん今の日本のポルノ規制はこんな露骨な思惑の下に敷かれているのではなく、単に近隣諸国への配慮という名の事なかれ主義的なものに過ぎないんじゃないかと見ている。そうでもなければアウトローな連中はもっと徹底的に叩かれ、潰されまくっているはずだし、精液入れる代わりにモザイク入れとけば ok みたいな不文律もまかり通らなかっただろう。「18禁」だって別に法的な根拠は (児童ポルノ規制法が施行されるまでは) 微塵も無くて、単なる自主規制で一般的に引かれたラインに過ぎなかった (恐らく男子の結婚が許される年齢に合わせたのだろうと思う。結婚できる歳の奴にエロビデオを見せないようにするのもナンセンスだし、みたいな)。

さて、今回の池田さんの記事では、「有害情報」という言葉が、ブログの「炎上」や「はてなブックマーク」などを使ったいやがらせ のことであると定義されている。

もちろん、おいらとしても、それが本当に「いやがらせ」であるならば、それは良くないことだなぁとは思う。もっと明白に、例えば恫喝といった類の言葉に至るのであれば、さすがにそれは法的にも処罰の対象とならざるを得ないものであるかもしれないとも思う。「これはひどい」程度ならまだしも、「ぶっ転がすぞ」「死ねばいいのに」はさすがに怖いとおいらも思う。

ただ、そういった行為を、「有害情報」だからどうにかしろ、と言うのであれば、それは違うだろう、とおいらは念を押したいところだ。行為については個別に罰するべきであり、恫喝の嫌疑にかけられるならば、それこそ警察に告発した上で、警察経由ではてなにログの提出を要請し、法に基づいてしっかり訴えてゆくべきことだとは思う。しかし、特定の言葉に対して「有害情報」認定し、それに基づいて特定の場を「有害情報が流通する場」と認定してしまうような法運用は、言論に対して国家が敷く強制力としては、あまりにも強すぎるのではないかと思うからだ。そこまでの強制力を国家に認めてしまえば、国民が本来権利として持つべき「表現の自由」は、まさに 公権力との関係で問題になる。そのような事態は、絶対に避けられなければならない。

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