大学の数を減らすという選択肢2015年06月08日 09時28分32秒

前回の続き、になるんですかね。お二人さん、コメントどもです。m(_ _)m

大学を名乗っていながらその内実は学術の体をなしていない…って、それまさにおいらが通ってたアレじゃないですかっていう(^-^; しかも学部なくなってるし(^-^;

で、まぁそういう感じの大学ってもう結構な数存在しますしそういうところが最終学歴な人って20~30台だとまあまあな割合いらっさると思うんですよね。

内実の伴わない大学が多すぎる!大学の数を減らすべきだ!という大局的な意見にはなんとなく賛同する人も多いんでしょうが、じゃあいざ自分の出身大学がこういう理由で大学としての要件を満たさないと見做されましたので廃校になりますとか、専門学校相当になりますとかって話になると、やっぱり抵抗を示す人がほとんどだとは思うんですよね。そういう抵抗は当の学校法人も同じことで、大学としての運営が許されなくなるような法改正案が出てきたとなれば当然大きな抵抗勢力となるでしょう。

そういう政治的な難しさもあるので、そこをうまいこと収めるために大学とも専門学校とも違う新しい枠組みを作りましょうという話は分からないでもないのですが、これはこれで各方面がちゃんと納得行く形に収まるものになるのか微妙なところなんじゃないかなとも思うわけなんですよね。

専門職大学院はこれはこれでいいと思うんですが、大学院は大学院なので、この手のアプローチを大学に適用する、つまりは専門職大学みたいな枠組みを作るっていうことになるんでしょうか。実はこれに類する動きは既に 3月ごろにあったようで、探してみるといくつかのニュース記事を見つけることができます。

専門学校は教育内容の自由度が高い一方で、質にバラつきもあることから学位を授与できず、国からの助成もない。企業からは各分野の専門人材の養成を求める声が多く、政府の教育再生実行会議は昨年6月、より高い水準で職業教育を行う教育機関を創設するよう提言した。

具体的には、卒業要件は大学・短期大学と同水準で、修業年限は2~4年、「学士」「短期大学士」相当の学位を授与することなどが適当とした。中教審においてさらに検討した上で、教育内容・方法、教員、施設・設備、評価などの基準は、新たな機関の目的に最適な枠組みとして新設するとしている。

どちらかと言うと現行の専門学校の地位を向上しようという文脈がベースにある話っぽいですね。専門学校よりも厳しい基準を設ける代わりに、卒業者にはれっきとした学位を認定するようにしよう、学校法人に対する助成も出そう、ということのようです。

修業年限は2~4年とし、学位も授与する。教育課程の優れた専門学校などが移行することを想定している。

とあるように、現行の専門学校からの移行を想定したもののようで、大学からの移行までは今のところ想定していないのかなぁ、という気もします。でもまぁ、使うとしたら多分、このスキームだと思うんですよね。

感覚的にはまさに大学と専門学校の「間」という感じで、学術研究の場としては限定的だけど一応各分野に学会はあって学術交流はなされているとか、職業教育の場ではあるけど特化し過ぎることもなく、特定分野に関してより体系的に習得できるものであるとか、講師の評価基準は必ずしも論文発表のみならず、教育成果や具体的な社会貢献活動によっても評価が得られるような仕組みがあるとか、そんな感じになるのかなぁという気がしています。

これ、たしかに専門学校からの移行は充分に期待できると思うんですが、大学からの移行については果たしてどの程度期待できるのかなぁ、という気はするんですよね。移行するに見合っただけのメリットというかベネフィットが、現行の大学にはあるのか。それがないと、この枠組み自体を創設することはできたとしても、じゃあ今ある大学の多くをこの枠組みに移行させてしまおう、というわけには、簡単には進まないんじゃないかな、と思います。政治的に。

そこで、当の大学法人にも、それらの大学を最終学歴に持つ卒業生にもまあまあ納得の行く形で、スムーズに専門職大学へ移行してもらえるような、政治的な手当についても考える必要があるのだろうなと思います。具体的に何をどうするべきかは私には図りかねるのですが…。

これから進学する高校生らからしてみれば、大学と専門学校は明らかに別物だとわかるし、短期大学は微妙なところだけど大学より期間が短いということはとりあえずわかりますよね。しかしここに専門職大学みたいなのが加わってくると、大学とは何が違うの? 専門学校とは何が違うの? ということになりそうな気はします。そこへ来て、「専門職大卒者は大卒者と同等かそれ以上に就職しやすいし待遇もいい」ということになるのであれば、十分に選択肢として期待もできると思いますし、それによって大学の淘汰圧が高まることになるのであれば、大学から専門職大学への移行も進むことにはなるでしょう。

そうなると、今度は民間企業の採用基準がキーになるという話になってくるのでしょう。企業の側もこの辺については真剣に考える必要はあるのだとは思いますが、そうは言っても民間の自律的・良心的な意識改革にのみ期待するのは無理があります。そこで、少々下衆なやり方ではありますが、専門職大学から卒業生が出始める最初の数年間については、そこからの卒業生を正社員として採用する企業に対して助成金を出すことも考えていいのではないかとも思います。

しかしそうまでして大学を減らし、大学とは別の高等教育機関を増やすことの意義とはなんなのでしょうか? とりわけ、大学を減らすこと自体の公共的な、明確な利益はあるのでしょうか? 助成金を減らすことができるという話は、その分増える新たな高等教育機関に出さねばならない助成金で完全に打ち消されるでしょう (専門学校からの移行の分も考慮すればむしろ出費は増えます)。大学とは助成金の額に差をつける、というのも (少なくとも最初の数年間は) 難しいでしょうね。「こんなにたくさん大学要るの?」という気持ちは理解できなくもないのですが、大学らしからぬ (と各人が恣意的に感じている) 大学が大学ではなくなっていくことで一部の人達の溜飲を下げることができる、ぐらいの話でしか無いのであれば、それはあまりに無意味でお騒がせな話ではあります。

そこで、あくまで大学を減らすこと自体を主眼に置くのではなく、あくまで職能養成に特化した高等教育機関という選択肢を、学生にも企業にも提示し、活用していただくことを主眼に置くべきなのでしょう。これは当たり前といえば当たり前の話なのですが、産業側が採用に際して求める教養や技能を明確にし、そのためにどのような教育が施されるべきかがある程度ビジョンとして明確になっていかないと、教育機関側だけでそれを作っていくというのは難しいことなんじゃないかとは思います。

そういう意味でも、産業界側からの積極的な参加、協力は欠かせないでしょう。当面は教育ノウハウがある程度確立していて新たな設備投資も少なく済みそうな専門学校からの移行を促すことになるのでしょうが、現状産業界と専門学校との間にどの程度のつながりがあるのかは微妙なんじゃないかとも思われますし、突き詰めれば結果的には教育プランを一から練り直したほうが早いということにもなりかねないかもしれません。

更にいうと、似たような産業の中でも企業によって求められる資質が異なっていたりすることもあると思うんですよね。それどころか、その産業の代表的な企業であるように見えるにもかかわらず、中の人達の技術向上に取り組む意識が低いために、有能な同業者らから見たら絶対に真似しちゃいけないしきたりが、ビッグネームだからというだけで盛り込まれてしまう可能性も危機意識としては持っておかないといけないかもしれないですね。ホント、業界の横のつながりって、大切だと思うんですけどね… ('A`)。